2016年11月2日水曜日

ロバの耳通信「天国の青い蝶」

「天国の青い蝶」(04年/カナダ・イギリス)

人には誰でもかなえたいと思う夢がある。車いすを離せない脳腫瘍の少年の夢は、ジャングルに住むという青い蝶「ブルーモルフォ」を捕まえること。同行するハメになった著名な昆虫学者の青い蝶は、17年前に妻とともに捨てた娘に会うこと。実話の映画化だとか。先住民の娘が言う、「なぜ青い蝶にこだわるの。あなたも私もすべてが青い蝶なの」と。自分のことを思うとため息をついてしまう。なかなかこれに気づかず、不満だらけで暮らしている自分を叱ったりする。不安の虜となったワタシはメーテルリンクの青い鳥をつまで探すつもりなのか。

不器用な昆虫学者役にはアカデミー賞男優ウィリアム・八一ト。風采のあがらないただのおじさんだが、この役をこなした彼は「一俳優人生の中で最高の体験」と感動を語ったと。監督のレア・プールは女性にしかできない繊細な、しかし病的ではない、あたたかな心のこもるアプローチでこの作品を仕上げ、この映画をただの難病モノにはしなかった。

偉くなることや、金持ちになることもいいのだろうけれど、今日は咳が少なかったとか、いつものエビフライ定食の添え物のパセリが、今日は特別みずみずしくて良い香りがしたとか、小さなステキで新しい発見。幸せとはこういうことの積み重ねなのだと思うようになってきた。

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