「オリーブ」(12年 吉永南央 文春文庫)
短編集の表題作で突然消えてしまった妻を描いた「オリーブ」が良かった。5年間連れ添った妻の家出の理由は「復讐」だったのだが、婚姻届けすら出していなかったから、妻でもなかったという不思議な話。結構な額を持ち逃げされたのだが、本当に失ったのが平凡な暮らしだったというオチはなんだか悲しくもある。先行き長くないから、お金を失うのはそう怖くもないが、カミさんが消えてしまったらと考えるとかなり、怖い。
5編の短編は普段の生活に潜んでいて、ちょっとしたきっかけで出てくる怪談みたいなものか。さらっと書かれていたらもう少し怖いのだろうが、作家が作り込んだ安直な辻褄合わせの不自然さが、怖さを消してしまっている。残念。
「妻が椎茸だったころ」(16年 中島京子 講談社文庫)
泉鏡花賞受賞作で、”ちょっと怖くて、愛おしい”と裏表紙の紹介にあった。短編集には当たり外れがある気がする。これは「ハズレ」。表題の面白さにちょっと惹かれた「妻が椎茸だったころ」も、読んだがイマイチ乗れず。作られたユーモアが不快。うん、コメディ映画がキライなのと同じ理由だ。
読んでいてつまらないとか感じだすと、つまらないことに気付く。紙が厚いのだ。190ページ弱のこの本が、一緒によんでいた270ページの文春文庫と同じ厚さ。そうか、これがこの本の硬さだったのか。文庫本のページが硬くて、ピンと立っているのはどうも、気に食わない。坊主憎けりゃ・・なのだろう。講談社文庫の活字の形や、しっかりした印刷は好きなのだが。
カミさんは気に入って、中島のほかの本も読みたいと。カミさんが借りてきたら、読んで見ることにしよう。
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