「三十光年の星たち」(13年 宮本輝 新潮文庫)
”これから幾人かの人を探す旅に出るので、すぐに用意をしなさい。”金貸しに運転手として雇われることになった無職の青年の旅はこうして始まった。彼女に逃げられ、親にも勘当され、下宿代も払えなくなった青年にほかの選択はなかった。
青年は金貸しに鍛えられ、多くのまわりの人に助けられながらも自身も懸命に生きる。感動の作品であるが、もはや大人になってしまった自分が、この小説のなかの多くの大人のように若い人の力になってきたか、直接助けることはなくても、手本になるようなことをしたかと考えると苦しい。毎日新聞の連載小説として反響が大きかったという。解説で作家の一志治夫が若い人に読んでほしいと書いていたが、この「三十光年の星たち」で途方に暮れていた青年を助け、導いたのは多くの大人たちである。宮本のメッセージは大人に向けて出されたものだと思っている。
「ひかりをすくう」(09年 橋本紡 光文社文庫)
パニック障害のため仕事を辞めた智子は都心を離れ、一緒に暮らすバツイチの哲ちゃんと郊外で新しい暮らしを始める。お金はどうするんだよ、世の中そんな甘くないよとか思ってしまうのだけども。智子は登校拒否の中学生の家庭教師をはじめ、子猫を飼い始め、悲しいことなんかあんまりなくて、家事の得意な哲ちゃんと仲良く暮らす。なんだか夢のような話だけど、まあ、こういう優しいのもいいかと思い、著者の橋本紡(つむぐ)は女性だとあたりをつけてwikiをチェックしたら猫好きの中年男性。ふーん、じゃあ、ちょっと違うな。なんだかね。
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