2024年11月20日水曜日
ロバの耳通信「埋み火」「サイレント・ブレス 看取りのカルテ」
著者名の”たちもりめぐみ”がどうしてもおぼえられない。手がかりの文字がない。「それでも、警官は微笑う」(06年 講談社文庫)で挫折して、もうこの著者の本を読むことはないと思っていた、カミさんが借りてきた「埋み火」。ああ、読めない名前のこの作家かと。気まぐれに読み始めたら、消防士の話。生活圏にいくつか消防署があり、大型の消防車や訓練風景になじみもあり、消防士の仕事に興味を持っていたからというのが読み始めた理由。600ページ近い長編だし、たぶんまた途中で挫折するだろうが、まあいいやと。
漏電などの失火事故による老人の死が相次ぎ、調べていったら単なる事故ではないようだという出だしから始めたが、半分まできてもサッパリ。小出しのヒントにも飽きて、もう訳わからん、と匙を投げそうになったところで、陰の犯人らしいのが登場。そこから先は急転直下のジェットコースター。涙を堪えての人情噺もあったりで、すっかり見直ししてしまったこの”名前をおぼえられない作家”。
「埋み火」には前作に同じ副題の同じ消防士を主人公にした「鎮火報」というのがあると解説にあった。消防車が帰りに鳴らす鎮火報について調べた記憶があるから、もしかしたら読んでいるかもしれない。「埋み火」の後半があんまりおもしろかったから、図書館に寄って「鎮火報」もチェックしてみようかと。
面白い本は最初から面白い、つまらない本はずっとつまらないという意識があったが、この「埋み火」で、それが偏見であったことに気付いた。カミさんに聞いたら、とっつきにくかったら、ガマンして読み続けるより、巻末の解説を先にチェックしたり、ページを飛ばして、パラパラと面白そうなところを拾い読みしてみるという手があるぞ、と。うん、なるほど。匙を投げるのはそれからでもいいか。
「サイレント・ブレス 看取りのカルテ」 (18年 南杏子 幻冬舎文庫)
終末期医療専門の現役の内科医が書いた小説のデビュー作だと。副題通りの看取りの重い話を気負わず語っているのがいい。良い医者は患者の希望を叶える医者。家族の希望でも、医者の都合でもないということを素直に認識させてくれた。
こういう本を素直に読める年齢になっている。ほんの数年前まで、ずっと持ち続けている持病やら、ガンやら脳梗塞やら、痛いのは嫌だな、苦しいのは嫌だなと怖さの虜になっていた時期があった。検診の数字にもビクビクして、再検査を受け、またドキドキ、なんて時期もあったが、いつかみんな死ぬのがアタリマエということに気付き、また最近は”何で死んでもオナジ”と割り切り、なんだかすっきりした。
2024年11月10日日曜日
ロバの耳通信「フィフス・ウェイブ」「ザ・インベーダー」
面白かったのは最初の15分くらい。30分くらいで、なんだか普通の映画とちょっと違うなと。動画を途中で止めて、wikiでチェック。ヤングアダルト小説が原作だと。ああ、そうか、だから童顔クロエ・グレース・モレッツの少女役が主演なんだと。つまりは少年少女対象の映画、アリテイに言えば子供騙し。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ(01年~ 米ほか)、「ダイバージェント」シリーズ(14年~ 米)とか、「ハンガーゲーム」シリーズ(12年~ 英)とか、ヤングアダルト映画もおもしろいものもあるんだけれど、この映画、シリーズ化が前提になっていて最初から手を抜いているから、途中はどうしてもダレる。
「フィフス・ウェイブ」は地球を侵略にきた宇宙人”アザーズ”との闘いを描いている。”アザーズ”は人間との見分けがつかず、アメリカ軍に化け、住民を淘汰しようとする。それを阻止しようとする少年少女の大活躍とか、主人公の少女に想いを寄せ、仲間を裏切り破壊工作を手伝う”アザーズ”とか、ヤングアダルト小説らしさは、オトナの観客には飽きられるんじゃないかな。シリーズ化狙いの続編の匂いプンプンの続編乞うご期待の終わり方もちょっとね。
「ザ・インベーダー」(11年 ベルギー)原題: The Invader
密入国して欧州の大都市に住み着いたアフリカ人が雇い主の密入国世話人と諍いになり浮浪者に。街で偶然見かけたセレブ女に一目惚れ。ストーキングしてついにはモノにするというゼッタイなさそうな物語なのだが、なぜか惹かれたのは万が一のチャンスを夢見る男のサガか。結局、セレブ女に振られ自暴自棄になって元の雇い主(密入国の世話人)を襲うーといういたってつまらない話。
主役の浮浪者役の西アフリカブルキナファソ俳優イサカ・サワドゴは欧米では結構有名らしい。初めてのベルギー映画の救いはセレブ女役のイタリア女優ステファニア・ロッカがメッチャ色っぽかったくらいか。
2024年10月28日月曜日
ロバの耳通信「ガーディアン」「カイト KITE」
題名は守護天使の意味。武器商人の殺人現場を目撃したために追われる少女を守るはみだし刑事。このパターンは多いけれど、この映画の見どころは何といっても銃撃戦のスゴさ。ヘッドフォンで大きめの音で聞くと、臨場感が楽しめる。特に、小銃の装填音、発射音やどこかに当たったときの衝撃音などが楽しめるのだが、ほかの映画でなかなか聞けないのが、耳のそばで撃ったときのキーンという耳鳴り音がなんともその気にさせる。
この映画、たぶん何回目かになるのだろうが、ついまた見てしまうのが主演の刑事役ティル・シュヴァイガーの活躍と銃撃戦の大音響を楽しむため。ティル・シュヴァイガーは昔から結構ファンで、「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(97年 独)、「Uボート 最後の決断」(04年 米)とか、近年では、スパイの時計屋を演じた「アトミック・ブロンド」(17年 米)もドイツ人らしい気難しい役に合っていてとても良かった。
「カイト KITE」(14年 米)
原作は日本のエロアニメ「A KITE](98年 梅津泰臣監督)だそうな。両親を殺された少女サワが刑事だった父の元相棒アカイから暗殺技術を教わり、犯人捜しをする。近未来の設定で、組織の生業が少女売買というところは目新しい感じはするが、探す宿敵の組織のボスは一番間近にいた、というまあよくある話。R15指定の割には、ソレらしいシーンもないが、どうもアタマを吹っ飛ばされたりとかのバイオレンスシーンのためか。(期待して損した)
少女サワ役がオリビア・ハッセーの実娘インディア・アイズリー。これが、まったくイケていない。セリフ回しは吹き替えなので何とも言えないが、表情も動きも役者とは思えないくらい。なにより、主役なのに、美しくも可愛くもない。致命的。アカイ役がサミュエル・L・ジャクソンなのだが、こっちも冴えないいつものワンパターン。演出も音楽なんかもぜんぜんイケない、C級映画。ここまで絶望すると、原作を追っかける気にもならず、撃沈。
2024年10月20日日曜日
ロバの耳通信「ひかりをすくう」「レイクサイド」「少年と少女のポルカ」
パニック障害のイラストレーターが仕事を辞め、哲ちゃんと一緒に住んでた都心のアパートから郊外に脱出。貯金でつなぎながら、近所の女子高生の英語の家庭教師をやったり、子猫を買い始めたり、哲ちゃんの前の奥さんと闘ったりで新しい暮らしになじんでゆく。
持病アリ、収入ナシの不安があったら、自分ならとてもこうは行かないだろうと思うけれども、まあ、こういう暮らしにあこがれる。なにより二人が「仲良し」なのがいい。
ワタシもカミさんも、その気になって一歩を踏み出せば、この物語ほどうまくはゆかないにしても、背負うものの少ない、もっと気楽な暮らしができる筈なのだが。
「レイクサイド」(06年 東野圭吾 文春文庫)
長く東野圭吾を読んできたけれど、こういう感覚は初めてかな。「ハズレ」。東野先生でも面白くない作品があるなだ、と。
有名私立中学受験のための合宿に集まった4組の家族。”妻は言った。「あたしが殺したのよ」”で始まる、湖畔の別荘地で起きた殺人事件。で「レイクサイド」、題名の付け方から安易~。
タネ明かしまで読めば、ああ、そういうことだったのかと思いがけない展開にオドロキはあったから謎解きミステリー小説としては良くできているのだろうが、ええっ、そんなのあるわけないだろうと失笑してしまうスジ。期待して読み始めたのに、つまらない小説、しかも面白いことでは裏切られたことのない文春文庫に、ただでさえ少ない残された時間を使ってしまったことに後悔。
「少年と少女のポルカ」( 00年 藤野千夜 講談社文庫)
裏表紙の芥川賞作家、海燕新人賞のツリに欺かれた感。単に私の嗜好に合わなかっただけなのだろう。
表題作は、いまはフツーになったLGBTの高校生の恋愛話。
海燕新人賞になった方は予備校生と同級生の物語に若い感性を期待して読み始めたのだが。突き出した元気さも感じ取れない、臆病な文章にすぐに飽きた。
漫画の原作みたいだなと思っていたら、著者は漫画雑誌の編集者だったと。デビューが早すぎたのかな。
2024年10月10日木曜日
ロバの耳通信「ウツボカズラの夢」「星々の舟」
乃南アサ。今まで何度も手に取った作家なのに、ちゃんと読んだことがあまりなかったような気がする。直木賞を獲っている「凍える牙」(08年 新潮文庫)さえ途中で何度も放り出しながらようやく読み終えた記憶がある。
「ウツボカズラの夢」は、母親の死去と父親の再婚で居場所のなくなった高校を卒業したばかりの娘ミフユが親類のおばさんを頼って上京。おばさんの家もバラバラな家族。居候からいつの間にかお手伝いさんのになり、おばさんのダンナと関係を持ち、おばさんが家出したあとはおばさんの息子と仲良くなり、結局そこの嫁に収まってしまう。著者はどうも、ミフユを食虫植物のウツボカズラに例えたのだと思ったのだが、解説(大矢博子)の”ウツボカズラは誰か”の問いに、考えこんでしまった。本当のウツボカズラが誰だったかは解説の最後に書かれていて、あーそうだったのかと思わず膝を叩いてしまった。
面白かったよ、「ほぼ初めての」乃南アサ。
「星々の舟」(06年 村上由佳 文春文庫)
直木賞受賞作の短編連作。巻頭の「雪虫」が特にいい。禁断の兄妹愛、妻子ある男ばかりを愛してしまう女、兵隊と慰安婦の恋。
物語のホネになっているのが形こそ違うがすべて男女の恋物語。男女の愛は生きる目的の要素になるとは思う。しかし、それがすべてだと並べられると食傷してしまう。
禁断の兄妹愛だけに、あるいは、個々の恋物語だけにしてくれれば、その情感により感動できたのではないか。共感はしても、究極と感じられる重い恋物語を次々に受け入れることなんて、私の年齢ではムリだと実感。村上由佳は私には刺激が強すぎるのか、それとも連作にヤラレたのか。
2024年9月30日月曜日
ロバの耳通信「タイラー・レイク -命の奪還-」「ブラック・シー」
メッチャ面白かったNetflixの新作。4月末公開したばかりの映画を、動画サイトではある
がゴールデンウイークに見ることができた。ウレシイ時代。
誘拐された麻薬王の息子を救出する傭兵タイラー・レイク役でクリス・ヘムズワースが不死身の男を演じている。誰が味方か、誰が敵か、そもそも少年を付け狙うのはだれなのかよくわからないのだが、全編追跡劇と派手なドンパチで画面に硝煙の匂いがするんじゃないかと思うほど。
いままでのカーアクション+ドンパチと違うのが、舞台がバングラデシュのダッカやインドのムンバイの人と埃と騒音にまみれた過密都市だったこと。実際の撮影もインドのアフマダーバード、ムンバイや タイのラーチャブリーで行われたとのこと(wiki)。雰囲気違うな、やっぱり。
傭兵リーダーをイラン女優のゴルシフテ・ファラハニが演じていて、これがエキゾチックでゾクゾクするほどの美人。インド女性風の黒髪で彫りの深いクールな表情でロケット砲や狙撃銃は撃つ、ラストではションベン中のラスボスの頭を至近距離から射抜き、倒れたところにシレっと止めの2発を打ち込むすごさ。不死身のクリス・ヘムズワースも良かったけれど、続編はこのゴルシフテ・ファラハニを主人公にしてほしい。
「ブラック・シー」(14年 英・米)
サルベージ会社を解雇され行き場を失った男たちが、黒海に沈んだとされるUボートから金塊を引き上げる話に乗り、ロシアのボロ潜水艦で黒海に乗り出す。
予想通り、ボロ潜水艦はトラブル続き、乗組員は金の配分で争い、結局は失敗に終わるのだが、暗い潜水艦の中で汗だらけのジュード・ローのカリスマ振りが楽しめた。
いままで多くの潜水艦を舞台にした映画を見てきた。例外なく面白かった。閉塞感が好きなのかな。もちろんホンモノには乗りたいとは思わないが。
初めてDVD再生機を買ったときオマケでついてきた数枚のDVDのひとつ、ウォルフガング・ペーターゼン監督の「U・ボート」(81年 西独)。当時、DVDがかなりの値段で新しいDVDを買うこともかなわず、まだVHS全盛の時代でレンタルDVDもないから、毎晩オマケのDVDを繰り返し見た記憶がある。映画としてもすごく面白く、今もネット動画で楽しんでいる。
2024年9月20日金曜日
ロバの耳通信「5人のジュンコ」「花酔ひ」「イノセント・デイズ」「突破」
金持ちのジジイに金を出させては殺してしまう連続殺人犯の佐竹純子と純子に関わりのある4人のジュンコの物語。出てくる女たちが皆、嫌気がするほど不快。どこかで起きた事件をモデルにしていると確信できるノンフィクションのような小説を、深淵の中の他人の不幸を覗き見る下世話な喜びも感じながら読み、作者の取材力に脱帽ーしていたのに。読み終えて、巻末の【参考文献】を見て困惑。
「毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記」 (13年 北原みのり 講談社文庫)と「誘蛾灯 鳥取連続不審死事件」 (13年 青木理 講談社)ーなんだ、参考文献だと、ただのパクリじゃないか。
真梨幸子は私には初めての作家で、裏表紙の著者解説を読むとクライムノベル作家だと紹介されていて、この「5人のジュンコ」の面白さに、好みの作家に出会った嬉しさを感じていたのに。
映画を小説にして、ノベライズと称し作家面をしているヤカラに苦々しさを感じているのと同じ、残念な気持ち。
「花酔ひ」(14年 村上由佳 文春文庫)
直木賞受賞作の短編集「星々の舟」(06年 文春文庫)の「雪虫」が気に入って続けて
読んだ「花酔ひ」。読み出しは和服屋を継いだ麻子の着物への思い入れの語りや京都弁など、見知らぬ世界は興味深く引き込まれていったのだが、結局はソレかと食傷。ソレとしか言いようのない淫靡な官能小説。それもダラダラと続く。男と女って、結局ソレしかないのかと、村上由佳とエロに落ちた文春文庫に失望。まいった。
「イノセント・デイズ」(17年 早見和真 新潮文庫)
辻村深月の解説を読み、巻末の2ページ分びっしり書かれた参考文献のリストを見て、大好きなノンフィクションの匂いを嗅いだのだが、ダラダラ続く文章に早々と挫折。良い題材なのにな。
「突破」(03年 西村健 講談社文庫)
裏表紙のツリ”豪快探偵・大文字が活躍する、息もつかせぬ痛快娯楽小説”に釣られて、半分くらいまで読んだが、あまりのつまらなさに挫折。何が、私の嗜好に合わないのかがどうしてもわからない。大げさフィクション、荒唐無稽はキライじゃないのだが。
2024年9月10日火曜日
ロバの耳通信「王の涙 イ・サンの決断」「グレイハウンド」
これは面白かった。朝鮮王朝第22代国王イ・サンの暗殺計画を題材にした映画で、勧善懲悪に拘りすぎず、王の側と暗殺者側からのそれぞれの視点で丁寧に描いているのが興味深かった。韓国の時代劇は、華美な衣装や宮廷の内装など映像美に凝りすぎたところがあると感じ、近年敬遠していたのだが、王イ・サン、側近の書記役などキャラの作り込みがしっかりしていて映画に入り込めて楽しめた。
唯一の難点は、ほとんどなじみのないキャスティングの顔認識ができず、混乱することがあったことか。歴史を少し学び、人物相関図を整理し、また見ることにしよう。
「グレイハウンド」(17年 スペイン)原題:Zona Hostil
同名でトム・ハンクス主演の新作米映画(20年)が話題になっているが、こちらはスペイン映画。
アフガン紛争に参加し、墜落したスペイン・米共同部隊(コードネーム:グレイハウンド)の救急ヘリのスペイン軍による救出を描いたものだが、夜中に迫りくるアフガン戦士がゾンビのように攻めてくる。夜中に撃っても、撃っても沸いてくるアフガン兵士。弾薬はなくなるは、救援の攻撃ヘリも弾切れ。もちろん眠るどころではない。ひっきりなしにタバコを吸うシーンに、なんだか緊迫感だけが伝わってきた。
アフガン紛争(01年~)なんてアメリカ軍とタリバン、アルカイダの戦いだと思っていたら、NATOも参加していたらしく、実話をもとにした映画らしい。
映画そのものはハリウッドが下請けしたらしく米映画の香り。
昔の米映画で、アラモ砦に攻めてくるインディアンが撃たれてバタバタと倒れながらもウンカのように押し寄せ、砦の隊長がもうだめだと諦めかけたところに救援隊がラッパを鳴らして登場、敵を打ち負かすーのと同じステレオタイプの救出劇であったが、まあ、楽しめた。
2024年8月20日火曜日
ロバの耳通信「アンダーウォーター」「シークレット・ミッション」
深海調査基地が海底地震で壊れ、そこから脱出しようとする隊員たちが地震で起こされた未知の生命体に襲われるという、既視感に満ちたストーリー。未知の生命体に襲われる話なんてのは、舞台が宇宙であったり、海底であったりはするもののもう飽きていて、さらに拙いことにCGの出来が悪く、画面が暗くて、何が何やらさっぱり。未知の生命体も薄暗い深海でゆらゆらとうごめくだけで、キモくも怖くもない。効果音も音楽もゼンゼン。ラストはお決まりの真実は不明のままであるという、新聞記事で締めるなんて。
これから日本公開ということだが、オバケ映画のようにせいぜい脅かした予告編で客寄せするのだろうがコロナ騒ぎで映画に行く人も皆無だろうから、どうなるものやら。20世紀フォックス最後の作品がコレかと幻滅。
唯一の救いは、胸ペタ、イケイケ姉さんの米女優のクリステン・スチュワート(「トワイライト〜初恋〜」シリーズ(08年~米)で内気な女子高生ベラ・スワンを好演)がいつものように格好良かったことくらいか。
「シークレット・ミッション」(13年 韓)原題:은밀하게 위대하게
原作はウエブ漫画だという。南(韓国)でアホのフリをして雑貨屋の手伝いとして暮らす北のエリートスパイ。前半のほのぼの、後半の銃撃戦。メリハリのついたストーリー展開は面白く、南の平凡な暮らしに戻りたかったという北のスパイのメッセージは伝わったが、北首脳がなぜスリーパーたちの自決を求めたかとか全くわからないところも多く、違和感が残ったまま。韓国映画には南北のスパイを扱った作品く名作も多いが、当事者でないワタシには、またこれかと食傷。本当のところ韓国人はこの映画をどう見たのだろう。
新型コロナ肺炎騒ぎで普通に出かける機会がぐっと減り、ネット依存症になってしまっている。ウイルスも怖いが、先が見えない不安にメゲそうになる。
ロバの耳通信「アメリカン・ハッスル」「ワイルド・ストーム」
Hustleには、「ぐんぐん押す」という意味のほかに「だまし取る」という意味があるそうだ。70年代の実際起きた収賄スキャンダルを基に作られたという。詐欺師役のクリスチャン・ベールとその片棒役エイミー・アダムスがゼンゼン詐欺師の役にあってなくて、こんなのに騙される方が悪いだろうと思ったりして。
映画批評サイトRotten Tomatoes の高評価のわりにつまらなかったと思うのは、たくさんの名優を揃えたのに配役を生かせてなく退屈感を感じ、どんでん返しの詐欺事件の結末が予想通りで、ちっとも驚かせてくれなかったから。当時のアメリカ人はこういうのが好みだったのかなあ。チョイ役でデ・ニーロまででてるんだもんなぁ。
唯一の収穫は、クリスチャン・ベールの妻役のジェニファー・ローレンス<「ウィンターズ・ボーン」(10年)>と会えたことかな。色っぽくて大好き。
「ワイルド・ストーム」(18年 米)原題:The Hurricane Heist
ハリケーンに乗じて紙幣処理場を襲った強盗団と戦う財務省職員や気象学者。。アリゾナを襲ったカテゴリー5という最大のハリケーンという想定だから、日本の台風の比じゃなく大型トレーラーも空を舞う迫力がすごかったけど、ディザスターパニックムービーって結構飽きるんだよね、ナカミがないから。
うーん、名監督ロブ・コーエンはキライじゃないんだけど、もはや昔のヒトかな。ザ・スカルズ/髑髏の誓い(00年)、ワイルド・スピード(01年)、トリプルX (02年 いずれも米)とか、若い頃は夢中で見れたんだけどね。うん、変わったのはロブ・コーエンじゃなく、私の方なんだろうけどね。
2024年8月10日土曜日
ロバの耳通信「シタデル」「プレッシャー」
原題は城塞の意。人の恐怖に取り付いて悪さをする子供の形をした悪魔に妻を殺された男はトラウマから広場恐怖症に。初めての場所や暗闇が異常に怖いPTSDの一種らしいが、取り付かれた若い父親役にアナイリン・バーナード。顔に見覚えはあるが、名前と顔が一致するほどは知らなかったが、とれることのない目の下のクマがなくても、表情が良かった。
残された乳飲み子を悪魔に攫われ、悪魔払いの牧師と悪魔に立ち向かう戦うために悪魔の巣窟である城塞、廃墟になった高層アパートに乗り込む若い父親。
15禁のワケは、悪魔の生まれた訳は近親相姦だという。牧師はヒトが作り出した悪魔をガンのようなものと説明するが、もしかしたらヒトが作り出した新型コロナウイルスもそうなのかと、牧師の言葉に説得力を感じた。
廃墟の中に懐中電灯に浮かび上がる悪魔の映像も、音楽も効果音も怖い。半端な怪談映画よりずっと怖い。「恐怖を映像にする」と、こうなると教えてくれた映画。映画が教えてくれたのは、恐れることで悪魔はヒトの心に住み着くと。だから、恐れるだけではダメだと。
エンドロールの曲が暗くて歌詞の字幕を読みながら聞いて、また怖くなった。
「プレッシャー」(15年 英)原題:Pressure
ソマリア沖の石油パイプラインの修理に向かった作業タンク。母線が突然の嵐で沈没。孤立した作業タンクの中の4人の生き残りの物語。酸素が段々少なくなってゆく密室の中で4人の人生が語られる。この手の映画だと、海中からモンスターがあらわれたり、乗組員がゾンビになって相方に襲い掛かったりのとんでもないストーリー展開になったりでバカバカしくなるのが普通なのだろうが、この映画、暖房装置が壊れたり、パイプが外れ酸素がたりなくなったりの地味な変化で楽しませてくれ、ほとんどシリアスな舞台劇に近い。
配役もほとんど知らない俳優ばかりだったのだが、エンドロールの音楽までシッカリ楽しめた。
コロナによる外出制限のため出かけられない雨の夕方、まあ、実際のところコレを言い訳にしてネット動画に張り付いているのだが、いい映画に出会えた。
2024年7月30日火曜日
ロバの耳通信「スカーフェイス」「GO」
富樫倫太郎のミステリー小説は何冊か読んできたがあまり好きじゃない。レトリックが好きじゃないし、こねくり回したストーリーの謎解きをするのは疲れるし、達成感も感じられない。
それでも読み始めたのは、書棚の主のように長く読まな
いままに放置の本だったし、コロナ騒ぎで紙の本が枯渇し始めていたという理由。電子本はかなり貯めてあるのだが、眠る前にフトンにはいって仰向けで読むことのできる利便性は、文庫本にかなう物はない。「スカーフェイス」(傷のある顔)という名前も、ツリのハードボイルド感、好きな警察小説、しかも女刑事モノであること、読みやすい印刷文字の講談社文庫と結構アドバンテージがあった筈なのだが。
連続殺人の犯人捜しの550ページの文庫本に数日費やした。やっぱり作りすぎ。やっとこさ読み終えた感。事実は小説よりも奇なりとか言うが、”奇なり”も過ぎると作り物感に疲れてしまった。ここまでトリックを組み立てて読者を最後のページまで引き付けたのはエライと思うが、真犯人と犯行の動機を明かされても不自然さに、そりゃ、ないだろーと読み終えた爽快感ゼロ。
やっぱり、相性が悪かった富樫倫太郎。
「GO」(03年 金城一紀 講談社文庫)
著者が在日韓国人である自身の友人たち家族を、悪ぶることも善人ぶることもなくイキイキと描いていて好感が持てた。登場人物がみんな愛すべきいいヤツなのがいい。良家のお嬢さんである桜井との恋物語がいい。良い話すぎて、カミさんいわく、”こういうのって、東大出のお父さんからの反対とかでうまくゆかないんだよねー”と。ウチなんか、両家ともビンボーニンの家族だったし、お互いイナカの出身だから揉めなかったけど、カミさんの危惧はわかる気がする。とはいえ、良い作品だった、久しぶりに。
直木賞受賞作だと、読み終わって知った。映画化(01年 邦画)もされているらしい。主人公の杉原役が窪塚洋介はいいけど、桜井役が柴咲コウだと。なんだかイメージ違うよね、とカミさんも同意見。
2024年7月20日土曜日
ロバの耳通信「軽蔑」「空母いぶき」
高良健吾と鈴木杏がチンピラとトップレスバーの踊り子、映画のキャッチコピーは「世界は二人を、愛さなかった。」とあるが、私的には「死ぬまで愛した」がいいかな。高良健吾は映画やテレビで良く知っていたが、鈴木杏の顔と名前が初めて一致し、メッチャ好きになったのがこの映画。
ストリッパーの役なのに踊りはヘタだし、ずん胴のペチャパイはなのだが表情がいい。厚化粧も起き抜けのスッピンのどっちもいい。戸惑い顔も泣き顔もいい。カラミのシーンが多すぎだが、時間に追われるようなカケオチなんてこんなものだろうと密かに憧れたりして。
チンピラと踊り子の逃避行、女の腕の中で男が息絶えるラストなんて、使い古されたストーリー(原作は中上健次 99年集英社文庫ほか)なのだが、二人とも役にピッタリ。べた褒めの映画評ほど、緑魔子とか根岸季衣とかほかの配役が良かったとも思わなかったけれど、鈴木杏は良かった。
「空母いぶき」(19年 邦画)
原作は同名の漫画(14年~ かわぐちかいじ ビッグコミック)。東亜連邦の侵略を受けた初島に日本の軽空母「いぶき」(航空機搭載型護衛艦)艦隊が救助に向かうというミリタリーもの。
主演が「いぶき」の艦長と副艦長役の西島秀俊と佐々木蔵之介。表情が乏しく、セリフ棒読み。ふたりとも、明らかにミスキャストだって。内閣総理大臣にいつもの難しい表情の佐藤浩市とか、新聞記者に可愛いだけの本田翼、オカシイだけの小倉久寛、明るいコンビニ店長に中井貴一とか、邦画特有の賑やかな友情出演歓迎キャスティングをしたばっかりに、意味のないサブストーリーは増えるわ、お涙頂戴のクサイ芝居が続くわで、映画への集中度が削がれた。
戦争放棄条文とか自衛権だとか、どっちつかずの演説口調の長いセリフにも辟易。ミリタリーものはドキュメント風にしてくれた方がずっと楽しめる筈。いくら日本の自衛隊が優秀だからって、テキの魚雷やミサイルはコッチに当たらないって、大東亜戦争の進軍ニュース映画のノリ。うーん、エンターテインメントでも反戦でも国威高揚でもない映画、時間のムダだった。かわぐちかいじの漫画だけでやめといたほうがいいよ、ゼッタイ。
2024年7月10日水曜日
ロバの耳通信「グレイハウンド」「イーオン・フラックス」「オールド・ガード」
第二次世界大戦中のアメリカ海軍の護送船団の旗艦の駆逐艦グレイハウンドとドイツ軍潜水Uボートの戦闘描いた戦争映画。C・S・フォレスターの小説「駆逐艦キーリング」をもとにトム・ハンクスが自ら脚本を書き、グレイハウンドの艦長役を演じた。艦長としての初めての商船団の護送任務に緊張するトム・ハンクスのシリアスな演技が光っていた。トム・ハンクスの映画でハズレたことがないが、この映画も彼の代表作になったのではないか。
駆逐艦と潜水艦の映画は、潜水艦側からの作品が多かったような気がするが、この「グレイハウンド」は駆逐艦が潜水艦とどう戦ったかの詳細が迫真の演技の中で紹介され、駆逐艦が主役というあまりなじみのない戦争映画として興味深いものになった。
wikiによればこの映画、今年のハリウッドの目玉作品として6月公開の予定だったが、コロナ感染拡大のため放映権を手放したソニー・ピクチャーズからアップルTV+が約7千万ドルで買い取り配信しているとあった。さらにコロナが長引けば、映画もダメになるのか。
雨の中、外にも出られず、コロナのせいでアーカイブとおもしろ動画の紹介ばかりの番組を見ながらカミさんと<最近のテレビが面白くなくなったね>と。テレビも同じ運命か。
「イーオン・フラックス」(05年 米)原題:Æon Flux
コミックが原作らしいが、スジが良くわからない。ポスターに惹かれて昔、DVDを見た記憶がある。どんなスジだったか思い出せず、今回、ネットでまた見たが、今回もスジが全くわからない。
ウイルスにより、人類のほとんどが死滅。残された人々が、外界と遮断されたユートピアを作るが、そこにも主流派と反主流派がいて云々。SF物語でももうすこし論理的じゃないと、頭がついて行かない。主演のシャーリーズ・セロンがスーパーヒロインとなって活躍。
シャーリーズ・セロンが好きじゃないワタシには何も残らない退屈映画。また、見るんじゃなかった。
「オールド・ガード」(20年 米)原題:The Old Guard
新作だし、Netflix期待で見たシャーリーズ・セロン主演のこれもやっぱりコミック(グラフィックノベル)の映画化。死なない傭兵たちが正義のために戦うという、なんとも子供じみたスジ。死なない傭兵たちを捕まえて不死の特効薬を作ろうとする製薬会社のCEOが悪役。傭兵隊長のシャーリーズ・セロンがいつものごとくムダに動いて大活躍。うーん、やっぱりつまらない。
主役以外のキャスティングはいいのに、惜しい。原作者のグレッグ・ルッカ(「守護者」(13年 講談社文庫)ほか)は大好きな作家なのに。
もう、女優辞めなよシャーリーズ・セロン。
2024年6月30日日曜日
ロバの耳通信「復活」「アメリカン・バーニング」
キリストを処刑した側のローマ軍の100人隊長(ジョゼフ・ファインズ)が見たイエス・キリスト(クリフ・カーティス)の復活。自分が磔にしたイエスの死体が消え、イエスと語り、イエスが起こした奇跡を目撃し変わってゆく。この手の映画は結構見てきたが、視点が変わっただけ。作品としても特記するところもないが、キャスティングは良かった。うん、ジョゼフ・ファインズとクリフ・カーティスのキャスティングは逆のほうがもっと良かったかも。考え込むところなど、ジョゼフ・ファインズのほうがずっとイエスらしい。
コレより少し前に見た「サン・オブ・ゴッド」(15年 米)では、静かに語るキリストから映画を見てる間、そのあとにもキリストの優しさが伝わってきて安らかな気持ちになれたが、視点を変えたこの「復活」ではキリストについての<何か、得心できるもの>が伝わってくることがなかったのが残念。特に、レプラに苦しむ男を奇跡で治すところなど、そこまでやらなくてもと。目の当たりに見せられる奇跡なんか、白々しくなってしまう。深淵なことをアカラサマにしたとたん怪しげに映る。信仰を題材にした映画のつもりで見ていたらそうではなかったようだ。
「アメリカン・バーニング」(16年 米・香港)原題:American Pastoral
高校ラグビーの元スター選手(ユアン・マクレガー )と高校のマドンナでミス・アメリカ
の州代表(ジェニファー・コネリー )のアメリカン・ドリームを絵にかいたようなカップル。カトリックとユダヤの宗教の壁を乗り越え結婚したが娘(ダコタ・ファニング)が成長するにつれて夫婦がうまくゆかなくなる。まずは娘の吃音、反戦運動、カルト宗教に凝るなど夫婦の頭痛のタネは尽きない。
出口の見えない暗い映画。これでもか、これでもかと不幸の連続。不幸の大きさは違っても、ジンセイこんなことの繰り返しかもしれないが、映画でこれをやられると救いがないではないか。それにしても三役のキャスティングが素晴らしい。映画化決定から撮影開始まで長い時間を要し、キャスティングも相当もめたというが、映画を見たらほかの組み合わせが考えられないの出来。ただ、辛くて2度は見たくない映画。
ユアン・マクレガーの初監督映画。おいおい、初なのになんでこんな暗い作品を選んだんだと。
原題のPastoralは田園詩の意味、田舎とでも訳したほうがいいのだろう、つまりはアメリカの田舎で起きた出来事ーみたいな意味か。原作はフィリップ・ロスの同名の原作だが、wikiによれば映画は原作とかなり違うらしい。
2024年6月20日木曜日
ロバの耳通信「SPOOKSスプークスMI-5」「スノーホワイト-氷の王国ー」
時間を忘れるほど夢中で見た。イギリスのスパイものが面白いのは伝統か。MI-5英国情報部内にテロリストの内通者がいることを知った情報部員が元部下と共に内通者を突き止めるというスジ。ラストのどんでん返しで、内通者がCIAと結託することでMI-5長官の席を狙う上級職員だったことが明かされるが、それまでは誰がワルモノかわからず、派手さのないアクションとジワジワと真実に迫る英国流の謎解きを楽しめた。
主人公の血の気の多い元諜報部員役にキット・ハリント(「ゲーム・オブ・スローンズ」(米テレビドラマ))、老練情報部員役のピーター・ファースが秀逸のスパイらしさ。さらにアメリカ生まれの英女優ジェニファー・イーリーがいつもの”冷たい表情の上級奥様風”で幹部役で出演していて、楽しめた。普段の英国ではキレイな女性なんかついぞみることはないのにこの映画の配役は皆、揃って美人。皆、女優だから当たり前といえばそうなのだが、現実との乖離が大きいとかなりの違和感。
英国で大ヒットのBBC製テレビシリーズ「MI-5 英国機密諜報部」をもとに作られた映画だというから、オリジナルの動画サイトへのアップロードを待つことにしよう。
「スノーホワイト-氷の王国ー」(12年 米)原題: Snow White & the Huntsman
原作はグリム童話の「白雪姫」。「本当は怖いグリム童話」みたいな本かマンガを読んだ「トワイライト」シリーズのベラ役(08年~))ってゼッタイオカシイ。
記憶があるが、この作品も十分残酷で怖い。主人公の白雪姫役にクリステン・スチュワート(
ダークファンタジーだし最後は継母の心臓に短剣を刺す役だから純潔無垢ばかりの美しいお姫さまというわけにはいかないだろうけど、ゼンゼンキレイじゃない。ディズニー映画の白雪姫のつもりで見ていた方も問題なんだろうけど、同じ年に公開された「白雪姫と鏡の女王」(米)の白雪姫役の英女優リリー・コリンズの輝くほどの美しさとはえらい違いだ。
継母役のシャーリーズ・セロン、この俳優、あまり好きじゃないのだけども、この映画では実にイキイキしていて気に入った。こういう本当は魔女で邪悪な継母役がピッタリ。この役でティーン・チョイス・アワード映画部門「ヒステリー賞」なんて賞を獲った(wiki)とあったけど、わかる気がする。
2024年6月10日月曜日
ロバの耳通信「デス・ウィッシュ」「孤独なふりした世界で」
チャールズ・ブロンソン主演の「狼よさらば」(Death Wish 74年 米)のリメイクで主演がブルース・ウイルス。前作では、小心のブロンソンが妻子が凶悪犯罪に巻き込まれてから、復讐心から銃を手にしタフガイに変化してゆく様に共感と喝采を送ったが、本作のブルース・ウイルスは外科医の設定ながら、最初から強面。犯罪で妻を失い、娘が瀕死となった父親が犯罪者を憎み狼に変わって行くーという一番いいところがまるで伝わってこない。
不死身(「ダイ・ハード」)のブルース・ウイルスを主演に持ってきたのはミスキャストだと思うし、ブルース・ウイルスはもはやパクリみたいなリメーク作品に出るほど窮してるのかと幻滅。犯罪が減っていないアメリカ大都市の社会問題提起なのか、自警団推奨が主題なのか、ただのアクション映画なのか。どっちにしても薦められない映画。
「孤独なふりした世界で」(19年 米)原題:I Think We’re Alone Now
疫病か何かで町の人が死に絶え、唯一人生き残り、死者を埋葬するだけの生活を送っていた小人症の男(ピーター・ディンクレイジー「ゲーム・オブ・スローンズ」(09年~ 米HBO)ほか)。薄暗い図書館で暮らす彼のもとに現れたひとりの少女。孤独を慰め合いながら一緒に暮らすうちに、少女の両親と言う男女が現れ連れ帰ってしまう。
ほぼ照明がなくなった町、ふたりになってからもセリフは殆どないから、押し包むような孤独感は半端ない。
大好き終末世界サバイバル映画。無人のスーパーで値段も見ないでカートにポンポンと食糧などを放り込むなんて、結構あこがれていいて、まあ、多少のお金ならあるし、近所のスーパーで一度やってみたいとも思うのだが、タダでもらうのとお金を払うのは気分がちがうだろうな、と。
2024年5月30日木曜日
ロバの耳通信「ミッション・ワイルド」「マイ・ブラザー 哀しみの銃弾」
トミー・リー・ジョーンズの主演・脚本・監督でリュック・ベッソン製作、面白くないワケがないのだが、なぜか日本では劇場未公開らしい。
Homesmanとは、開拓地で暮らせなくなった移住者を出身地に連れ帰る仕事を請け負う人。こういう救済システムみたいなものは実際あったらしい。教会が中心になってたようだ。
時代は南北戦争直後の西部。この映画では、開拓地の暮らしの中で精神を病んだ3人の女を馬車で約400マイル離れた教会に届けるというこの割の合わない仕事を引き受けた未婚の女(この時代ではオールドミスーヒラリー・スワンク)と、この女に雇われた流れ者(トミー・リー・ジョーンズ)が主人公。4人の女とひとりの男が哀しい。誰にも愛されないこの未婚の女の孤独は若い頃からモテることのなかった私には多少わかる。だが、3人の女の不幸はさらに酷い。ちょっと具体的にはココに書けないほど酷い目に遭って狂ってしまっている。演技とはいえ、女の狂ったのは怖い。
面白い役だったのがメリル・ストリーブ演じた、受け入れ先の牧師の妻。ひとことで言えばノー天気。この孤独と不幸続きの2時間の映画の終わりでつくり笑顔を見せられてもね、ゾッとしてメリル・ストリーブがより嫌いになった。
「マイ・ブラザー 哀しみの銃弾」(13年 米仏合作)原題:Blood Ties
主演が英男優のクライヴ・オーウェンでなんだかヨーロッパの匂いがすると思って見終わってからチェックしたら、米仏合作、しかもフランスの名優ギヨーム・カネ主演の「Les Liens du sang」(13年 仏)のリメイクだと。どうりでやたらお涙頂戴の情話風だし、配役、特に米仏混成女優たちのチグハグさが鼻につくなと。
物語は7年の服役後出所した男が、身内や前妻にも歓迎されず、再び悪の世界に身を落としてしまう、と、まあよくあるハナシ。
クライム映画はキライじゃないが、どうもこうウジウジしたフランス浪花節はどうもね。2時間半も待たされての終わり方もスカッとしていないし。
2024年5月15日水曜日
ロバの耳通信「INFINI/インフィニ」「アンロック/陰謀のコード」
「INFINI/インフィニ」(15年 オーストラリア)原題:Infini
原題は惑星の名前。そこにはエネルギー源となる鉱石があり割りのいい採掘の仕事があるが、行くにはスリップストリームという位相空間移動じゃないといけない。空間移動は人によっては狂ったり死んだりすることも。
鉱石が人間を狂わせる生物に汚染されていることが分かり、鉱石を自動転送するシステムを停止し、現地の技術者を連れ戻すための部隊をイニフィニに派遣することに。空間移動とか、鉱石そのものが生命体で、派遣されてきた人々の細胞を吸収することで成長するとか、SF映画らしい突拍子もないスジだったし、途中ダラけたが、まあ面白かった。
同類の「エイリアン」シリーズ(79年~ 米)みたいに、最後に続編を示唆するラストがあるかと期待したのだが、なーんにもなし。残念。
「アンロック/陰謀のコード」(17年 英・米合作)原題: Unlock
CIAとMI6、イスラムテロ集団、三つ巴のスパイアクション映画。スジはどうでもいいがキャスティングがすごい。映画は「完落ち」の意味。監督はマイケル・アプテッド、出演のノオミ・ラパスは好きな女優じゃないから(個人的に置いておいて)マイケル・ダグラスとかジョン・マルコビッチとか重鎮をいい役に配置。オーランド・ブルームなんぞは役もはっきりしないチョイ役扱い。これだけ役者を揃えると、製作陣も脚本も製作費も半端じゃいけないのだろう、おかげでスピード感のある面白い映画になった。
きわめて個人的な感想を書くが、ノオミ・ラパスのキシャな体と表情のなさは、スパイアクションの主役じゃない。
2024年5月5日日曜日
ロバの耳通信「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」「ファースト・キル」
「テイキング・オブ・デボラ・ローガン」(14年 米)原題:The Taking of Deborah Logan
アルツハイマーだとみられた老女が実は悪魔憑きだったというとんでもないハナシ。
事前チェックなしで見始めたオープニングではアルツハイマー病の記録フィルムを使っているとのテロップが流れ、「X-Men」シリーズ(00年~ 米)、「ボヘミアン・ラプソディ」(18年 米)など多くの有名映画の監督ブライアン・シンガーの作品だったし、テレビシリーズ「Dr.HOUSE」(04年~ 米)で、疾病を解説してくれていたので、アルツハイマー患者を扱った、結構ハードルも高いドキュメンタリー作品だと思っていた。事実、映画のスタート部分は、アルツハイマー症状で老女が奇行を繰り返し、明日は我が身の認識もあったのでそのつもりで見ていたのに、実はとんでもないオカルト・ホラー映画だった。アルツハイマー病を悪魔憑きと結びつけるなんて、どうかと思うよ。この映画、ワタシが大嫌いなヘビがたくさん。それだけでも腰が引けてしまっているのに。とにかく、誰にでも訪れる老いと悪魔憑きを一緒にする感覚は許せん。
「ファースト・キル」(17年 米)原題:First Kill
学校でイジメに遭いメゲてしまった幼い息子と、故郷の田舎町で一緒に狩りをすることで親子の絆を修復しようとする若い父親のヤング・エグゼクティブ(ヘイデン・クリステンセン)の物語。ヘイデン・クリステンセンは「スターウォーズ」シリーズ(02年~ 米)でアナキン・スカイウォーカーを演じ、散々こきおろされた軟弱男。極悪な町の保安官を演じた町の保安官役のブルース・ウィリスとは存在感が違う。ストーリーは、混み入っていて説明ももどかしいが、結局軟弱男が敵をやっつけ、息子との絆を取り戻すというハッピーエンドなんだけけれど、いまいち共感できないのはなぜだろう。ライフルを撃たせたり、父親の強い姿を見せられても、帰ればイジメは続くだろうし、父親は相変わらず家庭を顧みないだろうし。父と息子へのこだわりをアピールしたかった割りには父親の強さが見えてこないし、これだけ母親の存在感のないアメリカ映画もは珍しい。本国アメリカで公開されていないのは何故だろうか。やっぱり、面白くなかったんだろうな。
2024年4月20日土曜日
ロバの耳通信 「ファインド・アウト」「パーフェクト・ルーム」
「ファインド・アウト」(12年 米)原題: Gone
ジツのところ、アマンダ・セイフライド(「レ・ミゼラブル」(12年 米)コゼット役)が好きじゃない。嫌いなのはあの目かな。だから、誘拐モノ、犯人捜しの本当は面白い筈のストーリーも、アマンダの顔見てるだけでイライラが募るだけ。じゃあ、見なければいいのにという考え方もあるが、見始めたら最後まで見なきゃならない貧乏性。主人公のアマンダを全く信用せず、妹の失踪を妄想だと片付けてしまう刑事の気持ちのほうにより、共感。
当時、アメリカで社会問題とされていた、女性の誘拐事件の多さがこの映画のテーマらしい。ラスト近くで、犯人は主人公に殺されてしまうが、スッキリしない終わり方に余計、イライラ。
「パーフェクト・ルーム」(14年 米・ベルギー)原題:The Loft
これが文庫本だと、主な登場人物を紹介したリストがあるし、韓国ドラマとかはあらかじめ顔写真つきの人物相関図を準備して見始めるのが常。
よくそれで長くビジネスマンやってたねといわれそうだが、自分なりの工夫をしていたんだよ。自分にとって重要な人との初対面の際は、手帳に日時、氏名のほかに、推定年齢、簡単な似顔絵、似てる有名人など、その人を特徴付け、記憶するためのメモを書き込みしていたね。ハナシの途中で聞きだしたその人の趣味なども。
見終わった「パーフェクト・ルーム」も、結局犯人が誰だったかも良く憶えていない。そんな記憶力だから、映画や本は何度でも楽しめるし、レンタルビデオ・DVDの時代は同じものを2度も3度も借りてきて、家族に良く笑われた。
2024年4月10日水曜日
ロバの耳通信「ジュピターズ・ムーン」「Mr.& Miss.ポリス」
「ジュピターズ・ムーン」(17年 ハンガリー・ドイツ)原題:Jupiter holdja
ハンガリー国境で撃たれたシリア難民の少年が空中を浮遊する能力を手に入れ、それを利用し金儲けを企む医師。医師は医療ミスで多額の賠償金を求められていたというスジ。突然の体の変化で戸惑う少年と欲丸出しの医師の旅。暗いイメージのハンガリーの病院と病気を早く見てもらいたいと押し寄せる難民たち。何を示唆していたのだろうか。少年の戸惑いも医者の失意と欲望もなんとなくわかる。少なくとも楽しい場面や和むところもないから、娯楽作品でないことはわかる。映画の終わり方も放り出すような感じ。戸惑いと暗い気持ちだけが残った。ポスターは目を引くが、勧められる映画ではない。
「Mr.& Miss.ポリス」(14年 米・ロシア)原題:Black Rose
舞台はロサンジェルス。連続して発生しているロシア女性の殺人事件の捜査が進まないことに業を煮やした警察幹部はロシアから捜査員を呼ぶ。ロシアから来た特殊部隊出身の捜査員が、プロファイラーのネェちゃんと組んで大活躍。ひどい邦題はココからきているのか。原題の Black Rose は殺されたロシア女性が咥えさせられていたバラ。映画は粗っぽいツクリで、見るに堪えないどうしようもない作品だが、渡米したロシアの捜査員を出迎えたロサンジェルス市警の刑事が街を案内、大都市の光と影を説明し、浮浪者とゴミだらけの街を見せるシーンが良かった。B級映画でもなにかの思いを込めたところ、矜持みたいなものを確かに感じ取ったよ。
シュワちゃんがロシアンマフィアを退治にシカゴに乗り込む「レッドブル」(88年 米)で、安宿のテレビ番組をチラ見して”キャピタリズム(帝国主義)”と吐き捨てるように言ったセリフを耳にしたときと同じ気持ち。
2024年3月30日土曜日
ロバの耳通信「42 〜世界を変えた男〜」「マイル22」
黒人で初のメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの伝記映画。原題は彼の背番号でアメリカ野球界では今も永久欠番らしい。差別と闘いながらブルックリン・ドジャース(現ロサンゼルス・ドジャース)で活躍するようになるまでを描いている。
映画では、球団の会長(ハリソン・フォード)が繰り返される差別にキレそうになったロビンソンに、活躍することだけが差別に打ち勝つ方法だと諭すところがでてくる。なにかおかしくないかその考え方。頑張らなければ普通に生きることさえできないなんて。
映画は麻薬。だから、辛い思いにさせることは決してない。でも、いくら努力しても差別の壁を乗り越えることができなかった、という悲しい作品なら、少しは社会を変えることができるのじゃないか。万にひとつのサクセスストーリーを明るい映画にして夢を見せてくれても、能天気に生きられるわけがないのだから。
「マイル22」(18年 米)原題:Mile 22
マーク・ウォールバーグとインドネシアのアクション俳優イコ・ウワイスが主演のスパイもの。インドカーというアジアの仮想国でスパイを亡命させるため空港までの22マイルを護送するCIAエージェントが活躍するというスジなのだが、三重スパイとかまであるから、誰がテキかミカタかグッチャグチャ。
個人的には好きじゃないジョン・マルコヴィッチがいい役で出ていたから実はこいつが悪のボスじゃないかと予想していたが、ラストにあっけなく殺されてしまって肩透かし。
ちょうどこの映画の前に「ナチスの墓標 レニングラード捕虜収容所」(06年 ロシア・英)というつまらない映画でジョン・マルコビッチがワルのロシア将校役やってて、余計に印象悪かったからか。
まあスジなんかどうでもいいやの感で不死身のマーク・ウォールバーグのドンパチを満喫。